緊急的な避妊を目的として使用されるホルモン剤を『アフターピル』といいます。ほかにも「緊急避妊ピル」、「モーニングアフターピル」などと呼ばれています。
避妊を行わなかった・不十分であったなど、妊娠の可能性がある性交後に緊急的に取られる避妊措置です。アフターピルは望まない妊娠を防ぐために、性交後72時間以内に用いる薬です。
・避妊を行わなかった性交渉
・普段低用量ピルを内服しているが飲み忘れがあった、下痢などで吸収が妨げられた可能性がある
・性的暴行
・腟外射精
・コンドームやその他の避妊具の外れ・破損・不適切な使用
など
アフターピルの効用・効果は緊急避妊です。
その仕組みはまだ明かにされていませんが、主に以下の3つの作用が関わっていると考えられています。
妊娠は女性の体内で排卵が起こり、卵子と精子が受精し、その受精卵が子宮の中に着床することで成立します。そのためこのプロセスのいずれかに作用することで避妊効果を発揮します。
注意すべきは、アフターピルはあくまで性交後、緊急的に妊娠を回避するためのものということです。内服後の性交渉に対して効果を発揮するものではありません。そのような場合には、避妊効果が高い低用量ピルなどの計画的な避妊が必要です。
現在国内で主に使用されているアフターピルは『レボノルゲストレル』です。その他『ヤッペ法』という緊急避妊法がありますが現在はほとんど用いられていません。また海外ではエラワンというアフターピルもありますが、日本では未承認の薬になります。
レボノルゲストレルという黄体ホルモンの薬で、日本で初めて承認されたアフターピルです。妊娠阻止率は85%といわています。
ヤッペ法に比べ、避妊効果が高いことや副作用が出にくいこと、また1回の服用で済むことからレボノルゲストレルを第一選択とすることが推奨されています。
レボノルゲストレルには、ノルレボ錠とレボノルゲストレル錠があります。レボノルゲストレル錠はノルレボ錠の後発品(ジェネリック医薬品)であり、どちらも効果や副作用は同等です。
黄体ホルモンと卵胞ホルモンの配合薬である中用量ピルを用いた、従来からある緊急避妊法です。妊娠阻止率は57%といわれています。レボノルゲストレルに比べ安価ですが、有効性・安全性は低いとされています。現在はほとんど用いられていない緊急避妊法です。
◎妊娠阻止率とは排卵日付近での性交渉による妊娠を防ぐ確率のことをいいます
ノルレボ錠・レボノルゲストレル錠共に、性交後72時間以内に1錠を1回内服します。
必要量の中用量ピルを性交後72時間以内に1回、さらにその12時間後に1回の計2回内服します。
アフターピルは72時間以内の服用が必要ですが、その中でも服用が早ければ早いほど高い避妊効果が期待できます。
アフターピル服用後2時間以内に嘔吐した場合は、速やかに1回分を再度内服する必要があります。
・アフターピルの成分に対して過敏症の既往歴がある方
・肝臓の病気がある方
・心臓や腎臓の病気がある方
・妊娠している方(海外で実施された観察研究では、レボノルゲストレルを緊急避妊に使用するも妊娠に至った場合の胎児の奇形、流産等の出現割合は、投与していない場合と比較して差は認められなかったとの報告があります)
・授乳している方(アフターピルの成分は乳汁中に移行するため、内服後24時間は授乳を避ける必要があります)
※上記に当てはまる方は医師に伝えて相談してください
主な副作用には吐き気、不正出血、胸のはり、頭痛、眠くなるなどがありますが、これらの症状は一過性のものです。
従来のヤッペ法では副作用が出やすく、特に吐き気が起こりやすいです。それに比べて、レボノルゲストレルはヤッペ法よりも副作用が出にくいとされています。吐き気の出現率に関しては半分以下で、その他の主な副作用の出現率も低くなっています。
排卵が遅れるなど月経周期の乱れが起こる可能性があります。そのため月経がくるまではアフターピル服用後21日間の避妊が必要です。
また服用したにもかかわらず、月経が予定日より7日以上遅れる、あるいは通常より軽い場合は、妊娠の可能性が考えられます。必ず医師に相談し、必要であれば検査を受けてください。
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